WWD:素材開発にも関わっている?
ローマー:素材開発は、イタリアの工場と協力しながら進めている。私たちのような小規模なブランドは大手ブランドより柔軟性が高く、テスト用の型数を少なくして何度も修正を加えられる。これは工場側にとっても、少ないコストと稼働でより良い素材を開発できるメリットがある。
WWD:ビーガンフットウエアは、アッパーとソールの接合部分の接着剤選びに苦戦するブランドが多い。強度をどのように維持しているのか?
ローマー:高強度の接着剤ほど環境に悪影響を及ぼすので、接着剤をなるべく使わない方法を模索した。現時点では、アッパーとソールの接合部分をダブルステッチにしてシューズの強度を確保し、最小限の接着剤を使用している。接着剤を一切使わないシューズづくりは、フットウエア業界全体の挑戦だ。理想は、単一素材で1足丸ごと生産することだが、まだ開発と実験が必要な段階にある。
WWD:従来のスニーカーと比較して、「ヴィロン」のスニーカーの環境負荷軽減率は?
ローマー:30~40%軽減できている。環境への負荷が大きい素材や、工場で消費する電気や水、輸送時に排出される二酸化炭素量など、全工程でローインパクトに取り組んでいる。回収プログラムも実施しており、使い終えた「ヴィロン」の商品を送ると、顧客は次回購入の際に20ユーロのディスカウントが付与される。回収したシューズは、循環型生産システムによって工場で100%リサイクルされ、ソールに生まれ変わる。環境への負荷が最も大きいソールのリサイクル技術は、さらなる向上を目指しているところだ。
WWD:全商品PETA認証を取得しているが、認証の重要性をどのように考える?
ローマー:PETA認証は、世界最大の動物愛護団体による認定マークなので信頼している。だが、百貨店に行けば百貨店独自の認定マークを見かけることがあるように、マーケティングの手法として使われることもある。だからこそ、私たち消費者も注意を払い、サステナビリティへの知識を深めなくてはならない。政府公式の認証を発行するなど、時間をかけて大規模に取り組むべき課題だ。
WWD:サステナビリティへの消費者の関心や社会の動きをどう捉えている?
ローマー:フランスではビーガンやオーガニックのブランドが増えていて、消費者の意識もここ数年で大きく変化した。植物由来の素材開発も日々進歩している。価格が下がることで入手しやすい素材になり、多くのブランドが取り入れやすくなるだろう。日本は欧米に比べて環境への意識は遅れているかもしれないが、金継ぎ文化に見られるような、芸術品を修復して長く愛する精神を持っている。過剰消費は世界全体の社会問題だが、環境問題に敏感なZ世代を筆頭に、より一層サステナブルな方向へと進んでいくことを期待している。
WWD:今後の予定は?
ローマー:先日、ファーム・トゥ・テーブル(FTT)のレストランとコラボレーションして、彼らの畑から採れるビートルートを使って靴を染色した。パリのマレ地区にあるビーガンショップ「オウジョウデュイ ドゥマン(AUJOURD'HUI DEMAIN)」でポップアップストアを開催し、オーガニック野菜やビーガン製品と一緒に私たちのシューズを販売した。日本でも、21-22年秋冬シーズンからエストネーション(ESTNATION)や阪急百貨店、セレクトショップのヌビアン(NUBIAN)で取り扱いを予定している。
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